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大阪地方裁判所 昭和34年(行)75号 判決 1966年4月15日

原告 土居五十二

被告 大阪国税局長

主文

一、(一)姫路税務署長が昭和三四年四月一日原告に対し、デソート一九五一年型ステーシヨンワゴン、シボレー一九五〇年型ステーシヨンワゴン、プリムス一九五一年型ステーシヨンワゴン各一台の課税標準額をそれぞれ金七〇万円、金六四万六一〇〇円、金四七万一一〇〇円、物品税額をそれぞれ金二一万円、金一九万三八三〇円、金一四万一三三〇円と決定した処分および(二)被告が昭和三四年九月八日にした右処分に関する原告の審査請求を棄却する旨の決定は、いずれもこれを取消す。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、被告指定代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二、当事者双方の主張

一、請求の原因

(一)  原告は自動車の売買を業とする者であるが、原告が販売したデソート一九五一年型ステーシヨンワゴン一台(以下単に「デソート」という。)、シボレー一九五〇年型ステーシヨンワゴン一台(以下単に「シボレー」という。)、プリムス一九五一年型ステーシヨンワゴン一台(以下単に「プリムス」という。)について、姫路税務署長は、昭和三四年四月一日主文一、の(一)記載の処分(以下本件処分という。)をなし、右は同月四日原告に通知された。処分の理由は、右各自動車が貨物自動車であつたのを、原告において改造し普通乗用自動車としたので、普通乗用自動車の製造として物品税の課税対象となるというのである。原告は同月二八日右処分につき同署長に再調査の請求をしたが右請求は同年五月九日棄却された。そこで原告は同年六月八日被告に審査の請求をしたが被告は同年九月八日審査請求を棄却する旨の決定(以下本件審査決定という。)をした。

(二)  しかしながら原告は、前記自動車をいずれも貨物自動車として販売したのであつて、これを改造して普通乗用自動車を「製造」したことはないから、原告に対し物品税を課した本件処分およびこれを是認した本件審査決定は、いずれも違法である。よつてその取消を求めて本訴請求に及んだ。

二、被告の答弁および主張

(一)  請求原因(一)の事実は認める。

(二)  本件処分および本件審査決定は次の理由によつてなんら違法な点はない。すなわち、

(1) 本件自動車の通関、販売等の経緯

原告は、別表(一)記載のとおり、駐留軍軍人から本件の「デソート」、「シボレー」、「プリムス」計三台(以下本件自動車という。)を譲受けて輸入し、いずれも貨物自動車としての関税を支払つて通関させた(もつとも、後に乗用自動車に認定替されたことは後記のとおり。)。そして原告はこれらを同表記載のとおり販売した。

ところで、本件自動車は、もともといずれも乗用自動車として製造されたものであるが、右の各通関当時は、後部座席を取り除き、その部分を荷台とし、運転者席のうしろにベニヤ板、鉄製パイプ、金網等を取りつけて運転者席と後部を区別し、窓枠に鉄製パイプを取りつけるなどして貨物自動車に改造されていた。原告は通関手続を終ると通関当日、あるいはその翌日にあたる別表(二)記載の日に同表記載の三木自動車株式会社(以下三木自動車という。)において、先に取り除いておいた後部座席を再び取りつけ、先に取りつけていた金網等、鉄製パイプを取りはずして改造前の乗用自動車の状態に復元して販売したものである。

そして、改造・復元ごの各自動車の構造、形態は次のとおりである。

(イ) 「デソート」―運転者席のうしろに一列の乗車座席があり、そのうしろに更に一列の補助座席をつけたもので、その状態においては、貨物積載箇所はない。乗車定員九名。

(ロ) 「シボレー」―運転者席のうしろに二列の乗車座席があり、貨物積載箇所はない。乗車定員八名。

(ハ) 「プリムス」―運転者席のうしろに一列の乗車座席があり、そのうしろに貨物積載箇所があるが、乗用者の身廻り品を積載できる程度であつて、面積比において乗車設備より狭く、また自動車の構造上、重量物の積載はできない。乗車定員は六名、自動車検査証上の貨物最大積載量は零である。

(2) 本件処分の理由

前記のとおり、原告が本件自動車を通関させた時は、本件自動車はいずれも機能、構造、用途等の観点からみて、物品税法上は、非課税物品である貨物自動車であつた(ただし関税法上は、乗用自動車と見られる余地があり、そのこととは矛盾しないのは後記のとおり)。ところが、原告が通関ご前記のとおり改造・復元したことによつて、本件自動車はいずれも物品税法(改造・復元当時施行されていたもの、以下同じ。)一条二種丙類二八号の普通乗用自動車としての機能および構造を有するに至り、普通乗用自動車としての用途にあてられることになつたのである。すなわち、これは、非課税物品たる貨物自動車を材料として、課税物品たる普通乗用自動車を「製造」する行為に該当する。しかして、原告は、自動車の売買を業としている者であるから、物品税法六条四項((みなす製造))の規定にてらし、本件自動車を別表(二)記載のとおり三木自動車に委託して改造・復元させた日時、場所において製造したものとみなされるのである。よつて原告は、同法八条一項により、製造場から移出した本件自動車につき、数量および価格を記載した申告書を提出しなければならないのにこれを提出しなかつたので、所管の姫路税務署長は、同条三項により本件処分をなしたものである。

なお、物品税法一条二種丙類二八号の普通乗用自動車の適用に関し、本件自動車のごとく、貨物兼乗用自動車については従来から別紙第一、昭和二六年一〇月一日付国税庁長官の各国税局長宛通達間消二―一三〇「物品税法の取扱いについて」の第五章三二第一項の基準に従い物品税の課税がなされてきたものである。そしてその具体的で詳細な基準については別紙第二、昭和二九年九月一四日付消費税情報第二〇号に記載されているところである。よつて、物品税法上の貨物自動車と普通乗用自動車との区別の基準は右各通達によるべきである(右基準によれば、鉄製パイプ、金網等の取りつけがなくとも貨物自動車でありうる)。また、貨物自動車から乗用自動車への改造が同法にいう「製造」にあたるものとして取扱われていることについては、右別紙第一、の通達の第五章三二第五項に明らかなとおりである。

(3) 物品税と関税

門司税関長は、本件自動車を貨物自動車に該当するものと認定したのは誤りであり、関税定率法別表輸入税表上の乗用自動車にあたるものと認定替し別表(三)のとおり追徴関税の納付告知をなし、同表記載の納税義務者からその納付があつた。しかしながら、右の認定替の事実と本件処分とはなんら矛盾、抵触するものではない。

すなわち、物品税と関税とは、その対象、課税目的、課税回数、税率その他を異にするため、輸入自動車についていえば、当該物品の形態、構造、性状等の諸事情にもとづいて課税物品に該当するか否かの判断がなされなければならないことは変らないが、物品税の場合は、課税原因発生時における当該物品の現に有するこれらの諸事情(本件自動車についていえば、その外観、乗車設備部分と貨物積載設備部分との面積比および重量比等のもつぱら外形的標準)に着目して判断されるのに対し、関税の場合は当該物品が本質的に有していると認められるこれらの諸事情(本件自動車についていえば、車体の主要部分の材質、運転機構、乗心地などが乗用自動車に適するように設計、制造されているか、あるいは外観は一応貨物自動車になつているが、容易に復元して乗用自動車として使用することが合理的に予測されるか等の標準)に着目して判断されることになつている。そこで、本件の自動車のように、「本件自動車に加えられた改造は容易に除去される軽度の改造であり、これによつて税表上の乗用車としての性状を喪失したものとは認められない。」(右の追徴関税納付告知に対する原告の訴願に対する大蔵大臣の昭和三二年一月二四日付裁決の理由)として、関税法上は乗用車とみられても、物品税法上は輸入時には貨物自動車と判定されることがあることになる。そして、後日国内において、当該物品に改造等の操作が加えられ課税物品の定義に完全に該当するときは、当該改造等の行為は課税物品の「製造」と認められ、所定の物品税が課せられる。ことになる。これを目して違法、不当な課税処分とはいえないものである。

なお、原告が、本件自動車につき、あらかじめ税関ならびに所轄税務署に、貨物自動車として通関することが可能であり、物品税の対象にならないことの確認を求めた事実は知らない。

(三)  以上のとおりであつて、本件処分およびこれを是認した本件審査決定になんらの違法はなく、原告の本訴請求は理由がない。

三、被告主張に対する原告の認否および主張

(一)(1)  原告が、本件自動車を被告主張のとおり駐留軍軍人から譲受け、貨物自動車としての関税を支払つて通関させ、その主張のとおり販売したことは認める。

(2)  しかし、本件自動車はもともとステーシヨンワゴン(駅馬車)型と汎称されているもので、その型式、構造、機能の点からみて、主として乗用に供するぜいたく車ではなく、貨物運搬と乗用の性能を兼ね備えた実用車として製造されているものである。

(3)  「デソート」については、被告主張のとおり、改造・復元した事実は認める。しかし、これは大阪府警察病院の注文で実用車たる寝台車に改造したものであつて、機能的には貨物自動車と同一である。

「シボレー」、「プリムス」については、通関当時の状態は、最後部の座席がなく、窓枠に鉄製パイプが二本ずつ取りつけられていたことは認めるが、被告主張のように改造・復元した事実はない。すなわち、右二台の自動車については、通関時のとおり、最後部の座席はないまま(ただし、窓枠の鉄製パイプは通関後整備のさい取り除いた)販売したものである。

(二)  本件自動車の改造・復元が物品税法上の「製造」にあたるとする被告の主張は争う。

すなわち、貨物自動車と乗用自動車との区別は、陸運局の判定基準に従うべきである。ステーシヨンワゴン型自動車に関する右の基準によれば、当該自動車の貨物積載箇所が一平方米以上あり、かつ、運転者席から二列目の座席までの長さと二列目の座席から最後部までの長さを比較し後者が長ければ貨物自動車ということになつている。そして、後部に金網があるかパイプが取りつけられているかは影響しない。右基準に従い、「デソート」および「シボレー」は兵庫県で貨物自動車として登録され(兵一―五六〇一および兵一―五九〇七)、「プリムス」は貨物自動車として登録することを条件として販売した(「デソート」はのちに救急自動車として登録換された。)。

また、被告主張の前記各通達による乗用自動車の要件によつても、本件自動車は該要件を充足していない。

(三)  被告主張の関税追徴処分があつたことは認める(しかし、これは違法な処分である)。

原告は、本件自動車を輸入するに当つて、税法上の疑義をさけるため、あらかじめ、税関および所轄税務署から、本件自動車は貨物自動車で通関することが可能であり、かつ、物品税の対象にならないとの確認をえたうえ、貨物自動車として通関、登録、販売したものである。原告は、国の右認定を信頼して取引をなしたものであり、本件において、もし、関税においても、物品税においても、当初から乗用自動車として課税されることが明確であれば、販売価格の点について、原告が十分考慮を払えたであろうことは容易に推測がつくことである。国民に不測の損害を与えないためには関税における判定基準と物品税における判定基準を一致させるのが合理的であり、被告主張のように、国がその時々において判定を異にし、時には係官の判定の誤りを理由に認定替をして追徴処分をすることが許されるならば、国の判定の不明確さに基く責任を国民の予期しない犠牲において解決しようとするものであつて、とうてい許されない。

本件処分は、右の理由からいつても違法である。

第三、証拠関係<省略>

理由

第一、請求原因(一)の事実および原告が、別表(一)記載のとおり、駐留軍軍人から本件自動車を譲受けて輸入し、いずれも貨物自動車としての関税を支払つて通関させ、同表記載のとおり、販売したことは当事者間に争いがない。

第二、そこで本件処分および本件審査決定で適法か否かについて判断する。

一、本件自動車の改造・復元の有無、程度

(一)  原告が、「デソート」の後部座席を取り除き、その部分を荷台とし、運転者席のうしろにベニヤ板を取りつけて運転者席と後部を区別し、窓枠に鉄製パイプを取りつけた状態で通関させ、通関当日の被告主張別表(二)記載の日に、同表記載の場所において、先に取り除いておいた後部座席を再び取りつけ、先に取りつけていたベニヤ板、鉄製パイプを取りはずして、被告主張の構造、形態の自動車に改造・復元したことは当事者間に争いがない。

(二)  成立に争いのない乙第四号証、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第五(証人岩見良助の証言により原本の存在も認められる)ないし第九号証、第二六号証、証人今吉勉の証言により真正に成立したものと認められる乙第一九号証、「シボレー」を写した写真であることは当事者間に争いのない検乙第二号証の一、二、証人堀内直助、今吉勉、新行内猛太郎、大村考信の各証言、原告本人尋問の結果(ただし、前示乙第五号証、第八号証、証人大村考信の証言、原告本人尋問の結果中後記信用できない部分をのぞく。)によれば、原告は「シボレー」について、被告主張のように、後部座席二列を取り除き(ただし、最後部の座席がなかつたことは争いない。)、運転者席と後部との間に鉄製パイプを通し、窓枠に各二本の鉄製パイプを取りつけた(ただし、窓枠に右パイプが取りつけられていたことは争いない。)状態で通関させ、通関当日の被告主張別表(二)記載の日に、同表記載の場所において、取り除いておいた後部座席二列を再び取りつけ、先に取りつけていた鉄製パイプを取りはずし、被告主張の構造、形態の自動車に改造・復元して神戸へ向け移出しそのご販売したことが認められる。前示乙第五号証、第八号証、証人大村考信の証言、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は信用できない。他に右認定を左右する証拠はない。

(三)  成立に争いのない乙第一〇号証、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一一(証人岩見良助の証言により原告の存在も認められる。)、一二号証、第二五号証、前示乙第二六号証、「プリムス」を写した写真であることは当事者間に争いのない検乙第三号証の一ないし四、証人堀内直助、新行内猛太郎、大村考信、豊福直平の各証言、原告本人尋問の結果によれば、「プリムス」については、後部座席一列を取り除いて(ただし、この点は争いない)、運転者席のうしろに金網をはり、窓枠に鉄製パイプ二本を取りつけた(ただし、この点は争いない)状態で通関され、通関の翌日である被告主張別表(二)記載の日に、同表記載の場所において、原告は、後部座席を取りつけ、金網、鉄製パイプを取りはずして、乗車定員六名、後部に貨物積載設備のある自動車に改造・復元して神戸へ向け移出しそのご販売したことが認められ、右に反する証拠はない。

二、本件自動車の改造・復元は「製造」にあたるか。

(一)  前示認定の改造・復元ごの本件自動車が物品税法一条二種丙類二八号の普通乗用自動車にあたるか否かにつき、考えてみる。

乗用自動車といい貨物自動車といつても、いずれも自動車の用途上の区別にすぎない。本件自動車は、前示認定のようにいずれも貨物兼乗用車として、右の両用途に併用されるものであるが、これが物品税法上の乗用自動車にあたるか否かについて判断するには、結局、主として「乗用」に用いられる貨物積載が補助的なものを乗用自動車、主として貨物積載に用いられるものを貨物自動車という外はない。その具体的な基準は、被告主張別紙第一、二記載のとおり、乗車設備と貨物積載設備の面積の比較、乗車設備および貨物積載設備に乗用または積載しえる重量の比較によるのが妥当であるといわなければならない。

右基準を改造・復元ごの本件自動車に適用すると、前示認定のように、「デソート」、「シボレー」は、いずれも運転者席のうしろに二列の座席があつて、貨物積載箇所はないから、主として「乗用」に用いられるもの、すなわち乗用自動車と認められる。

「プリムス」については、前示認定のように、運転者席のうしろには一列の座席があるのみで、その座席の後部に貨物積載設備があるが、前示乙第二五号証によれば、乗車設備の面積(84×147/cm2)が貨物積載設備の面積(80×138/cm2)にくらべて大きいと認められ、右に反する証拠はないから、乗用自動車と認められる。

(もつとも、後記認定のように、本件自動車のようなステーシヨンワゴン型自動車の運転者席後部の座席は、必要があれば、比較的容易に取りはずしができてそのあとに貨物を積載しうるのが特徴であるけれども、固定しうる座席が据えつけられる以上、前示認定のように本件自動車は主として「乗用」に用いられるものであつて、貨物積載の用途を補助的なものとみることの妨げになるものではない。)

なお、乗用自動車と貨物自動車の区別に関する原告の主張について一言すると、陸運事務所に貨物自動車として登録されるか、乗用自動車として登録されるかは、物品税の課税される乗用自動車に当るか否かについての基準とは一応別だと考えられるばかりでなく、原告が主張する基準によつても、改造・復元ごの「デソート」、「シボレー」は貨物自動車ではなく、前示乙第二五号証によれば、「プリムス」の運転者席から二列目の座席までの長さ(84cm)は二列目の座席から最後部までの長さ(80cm)にくらべて長いから、「プリムス」も乗用自動車と認められる。よつて、これを貨物自動車であるとする原告の主張は採用できない。

次に、原告は、「デソート」については、病院の寝台車として改造・復元したものであるから、機能的には貨物自動車と同一であると主張するが、成立に争いのない乙第一号証、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第三号証、証人牧野勉の証言、原告本人尋問の結果によれば、原告が大阪府警察病院茨木分院の注文を受けて、「デソート」を主として救急および患者送迎用の自動車に改造したのは、通関直後福岡市の前示三木自動車において「デソート」を改造・復元したのちのことであり、それは神戸市の西村自動車室工場でなされたものであることが認められる。三木自動車において改造・復元された「デソート」が乗用自動車にあたること前示認定のとおりであるから、原告の右主張は失当である。

結局、改造・復元ごの本件自動車は、いずれも物品税法上の普通乗用自動車にあたる。

(二)  次に、物品税法上の「製造」があるとするためには、前示認定のように、改造・復元して三木自動車から移出された本件自動車がいずれも課税物品たる普通乗用自動車であることのみではたりず、右改造・復元が社会通念よりみて製造の概念に含まれるものでなければならない。よつて、この点を検討する。

原告が本件自動車を駐留軍軍人から輸入し、通関させ、三木自動車で改造・復元ご神戸へむけ移出した事実の概要は前判示のとおりである。

証人堀内直助の証言により真正に成立したものと認められる乙第二号証、前示乙第二六号証、証人堀内直助、新行内猛太郎、豊福直平、長野乙彦、今吉勉の各証言、原告本人尋問の結果により、右の改造・復元をやや詳細にみると次の事実が認められる。

ステーシヨンワゴン型自動車の後部座席はボルト等でとめられているだけで、ドライバーなどにより簡単にとりはずしできるものであり、三木自動車でとりつけたベニヤ板、鉄製パイプ等もビスどめだけで別に溶接して固定したわけではなく実に簡単なとりつけであつた(前記追徴関税納付告知に対する原告の訴願に対する大蔵大臣の裁決理由も、本件の改造が容易に除去しうる軽度な改造だとしていることは被告も主張するところであり、成立に争いのない乙第二〇号証の二、三により右事実が認められる。)。この改造費は約八〇〇〇円(「デソート」につき。他も同程度と推認される。)であつた。そして、取り除いた座席は三木自動車に置いておき、通関ごいずれも貨物兼乗用のステーシヨンワゴンとして販売されたものである。

以上の事実が認められ、これに反する証人徳久郁二の証言は信用できず、他に右認定を覆えすにたりる証拠はない。

以上の事実関係から判断すると、本件の改造・復元は、結局完成品であるステーシヨンワゴン型自動車に簡単なとりつけ、とりはずし等の操作を加えて貨物積載設備の面積が乗車設備の面積より広いように見せかけたが、それは一時的、形式的なものにすぎないのであり、そのご直ちに、容易に元の完成品であるステーシヨンワゴン型自動車に復元したものであつて、貨物兼乗用自動車として有する機能、構造、用途等を実質的になんら変更したものではない。従つてまた取引価格も改造・復元によつて上昇したわけではなく、終始、貨物兼乗用のステーシヨンワゴン型自動車としてのそれを保有し、かつそのように販売されたものである、ということができる。

右のように、原物品(完成品たる一定の原物品)に操作を加えても、当該原物品と操作を加えられた物品との機能、構造、用途等が実質において彼此同一である(従つて取引価格も上昇することはない。)と社会通念上みられるときは、右の操作は、「製造」(現実の製造)に当らないと解すべきである。

被告は、この点に関し、関税と物品税の課税観点の差異を強調し、物品税は当該物品の現に有する形態、構造、性状等の請事情にもとづいて課せられるから、復元前の本件自動車は、関税法上はともかく、物品税法上は貨物自動車にすぎず、復元してはじめて乗用自動車になり、その間を「製造」ととらえるべきだと主張する。関税と物品税の差異が一般論として、被告主張のとおりであるにしても右にいう「現に有する」諸事情が単なる形式的可視的なもの、例えば見せかけ(仮装)にすぎないものを指す趣旨であるならば、不相当であつて、採ることができないし、社会通念上の実質的な考察を容れうる趣旨ならば、そのような前提をとつても、本件においては、改造・復元は比較的簡単なものでありその改造・復元の前後を通じ、本件自動車がステーシヨンワゴン型貨物兼乗用車としては同一である(そしてそれらは、前後を通じ、物品税法上は乗用自動車に該当することは先に判示したとおりである。)とする先の見解と相容れないものではない。

結局、本件には、乗用自動車の「製造」はない、といわなければならない。

三、してみると、原告が本件自動車について乗用自動車を製造したことを課税原因とする本件処分およびこれを是認した本件審査決定は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも違法である。

第三、結論

よつて、本件処分および本件審査決定はいずれもこれを取消すこととし、訴訟費用の負担につき民訴八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 山内敏彦 高橋欣一 石井一正)

別表(一)

車種

台数

譲受年月日

通関年月日

税関名

売渡年月日

売渡先

「デソート」

二九・八・一三

二九・八・一六

門司税関唐津支署

二九・一〇・一二

大阪府警察病院茨木分院

「シボレー」

二九・一〇・二二

二九・一〇・二五

右同博多支署

三〇・三頃

鹿島建設(株)徳島出張所

「プリムス」

三〇・八・二六

三〇・八・二九

右同

三〇・九・二三

(株)日光社

(註(株)は株式会社の略語。以下同じ。)

別表(二)

車種

改造年月日

改造場所

「デソート」

二九・八・一六頃

福岡市中比恵町九〇七番地三木自動車(株)内

「シボレー」

二九・一〇・二五頃

右同

「プリムス」

三〇・八・三〇頃

右同

別表(三)

車種

納付告知の年月日

追徴関税額

納税義務者

納付年月日

「デソート」

三一・八・一一

七〇、五〇〇円

原告

三二・一一・三〇

「シボレー」

三一・九・一八

三二、三九〇円

右同

三二・五・九

「プリムス」

三二・八・一

三四、九二〇円

日本通運(株)博多港支店

三三・三・三一

別紙第一

物品税法の取扱いについて

三十二 普通乗用自動車。但し、第五十二号および第六十四号に掲げるものを除く。

(1) 貨物兼乗用自動車に対しては、次によつて取り扱うこと。

(イ) ステーシヨン・ワゴン、ピツクアツプ型(貨物積載部分に蓋を有するもの。)等のように乗用者の身廻品程度の貨物積載部分を有するものについては、普通乗用自動車として取り扱うこと。

(ロ) 指揮官車。ピツクアツプ型(貨物積載部分に蓋を有しないもの。)等のように貨物積載箇所((イ)に規定するものを除く。)と、乗用設備とが明確に区分して設けられているものについては、課税しないこと。

(ハ) デリバリー・ワゴン、ライトバン等のように運転者席の後部にこれと平行に二列の座席を有するもの(折畳式のものおよび簡単に座席を取りつけることができ、車体と座席とを同時に移出するものを含む。)については、原則として乗用自動車として課税することゝし、一列のみ座席を有する場合において貨物積載箇所としての余裕があるものについては、課税しないこと。

(ニ) 運転者席の後部の両側に座席を設けたものであつて、陸運事務所の登録基準によりバスまたは貨物兼乗用自動車として登録されるものについては、課税しないこと。

(2) 電波測定車と称するもので、運転者席の後部に測定機を設備し、機械を操作する者および補助者の座席程度を設けたものは、普通乗用自動車と認められないから課税しないこと。

(3) 無線警ら自動車、(ラジオカーまたはパトロールカーともいう。)については、普通乗用自動車と認められないから課税しないこと。

(4) 乗用自動車については、シヤシーにボデーをとりつける場所をもつて自動車の製造場として取り扱うこと。

(5) 単にガソリン機関または代燃機関を電気機関に改造する程度のものは、自動車の製造として取り扱わないこと。但し貨物自動車、乗合自動車等を乗用自動車に製造する場合またはボデーをとりかえる場合等は、これを乗用自動車の製造として取り扱うこと。

(6) 電気乗用自動車にバツテリーをとりつけて移出するものについては、当該バツテリーの価格を含めた金額を課税標準として取扱うこと。

別紙第二

昭和29年9月14日

消費税情報第20号

国税庁間税部消費税課

(29・10・6~8開催 間税課長会議協議事項として示達)

物品税法基本通達の一部改正の理由とその要点について

四 課税範囲関係

3 (貨物兼乗用車に対する取扱について)

ステーシヨンワゴン、ライトバン、ピツクアツプ型および指揮官車等のような貨物兼乗用自動車に対しては、これを乗用自動車として取り扱うべきかまたは貨物自動車として取扱うべきかについて疑義があるので、これらの自動車に対する物品税の取扱については、物品税法基本通達中に規定してその取扱を定めていたのであるが、その規定が抽象的な表現になつていたため、これを具体的に規定した。

運転者席の後部に乗車設備および貨物積載設備を有するものの改正後の取扱を図解すると、次のとおりである。

乗車設備および貨物積載設備の面積の算定方法

1 乗車設備の面積は次によつて算定する。

(1) 固定の座席を備える構造の場合にあつては、運転者席の背あての最上部の後端から最後部座席の後端までの水平距離にその室内の巾を乗じたものによる。

なお、運転者席の背後に隔壁または仕切棒等が設けられている場合にあつては、その後端から最後部座席の後端までの水平距離にその室内の巾を乗じたものによる。

(2) 固定の後向き座席等であつて、座席の前縁が貨物積載設備に面しており、その間に隔壁等がないような構造のものの場合にあつては、その座席の前縁から20cmまでは乗車設備の面積に含めるものとする。

(3) 折たたみ式の座席を備える構造の場合にあつては、これを乗用として利用した際の乗車設備について(1)および(2)に準じて算定したものによる。

2 貨物積載設備の面積は次によつて算定する。

(1) 貨物積載設備の上方開放部面積が床面積よりも狭い場合にあつては、その床面からの高さ1m未満の箇所における最小開放部の垂直投影面積による。

(2) 屋根および側壁(簡単な幌によるものであつてその構造上屋根および側壁とは認められない場合を除く。)によりおおわれている貨物積載設備を有するものの場合にあつては、その室内の最高部の高さの中心における水平面積による。

以上の方法によつて、乗車設備および貨物積載設備の面積を算定した場合は、次に乗車設備および貨物積載設備に乗用または積載し得る重量を算定して、当該自動車が乗用自動車であるか貨物自動車であるかを次によつて判定する。

設備

面積

重量

判定

乗用設備

広い

重い

乗用自動車

貨物積載設備

狭い

軽い

乗用設備

広い

軽い

乗用自動車

貨物積載設備

狭い

重い

乗用設備

狭い

重い

乗用自動車

貨物積載設備

広い

軽い

乗用設備

狭い

軽い

乗用自動車 ただし貨物積載設備と乗車設備とが明瞭に区分して設けられているものであつても貨物積載設備の床面積(貨物積載設備の上方開放部面積が床面積より狭い場合においては床面からの高さ1m未満の箇所における最小開放部の垂直投影面積をもつて床面積とする)が1平方m未満のものは、乗用自動車とする。

貨物積載設備

広い

重い

図解

ステーシヨンワゴン、ライトバン等 図<省略>

(イ)=乗車設備の面積の算定箇所

(ロ)=貨物積載設備の面積の算定箇所

ピツクアツプ型 図<省略>

(イ)=乗車設備の面積の算定箇所

(ロ)=貨物積載設備の面積の算定箇所

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